−fraise−

fraiseはフランス語で「いちご」。いちごケーキのような甘酸っぱい恋愛話で至福のひとときを。

哲学「少年」と「大人」の女性の恋

      2017/12/26

一浪して、僕は希望する大学にやっと合格できた19歳の春でした。
その大学は僕の住む地方ではかなりの難関校のため、合格自体は両親はとても喜んでくれました。

でも、僕が希望した学科は、「文学部哲学科」。

両親からは、「なんで法学部や経済学部にしないんだ。そんなところに行っても就職ないぞ」
と言われました。

 

しかし、なんでと言われても、「哲学を勉強したい」という以外に、理由なんてありません。
「登山に理由なんてあるか。そこに山があるから登りたい。それと同じようなもんだろしたい山があるから」
そんな感じの生意気な返答をしていた記憶もあります。

 

実際、入学した哲学科は、確かに「就職第一」というような、今でいう「意識高い系」や「リア充」といったタイプの学生は、少なそうな印象は持ちました。

 

そんな中一人、絵に描いたような美人がいました。彼女の名前はYさんとします。

 

聞くところによると、彼女も同じ一浪。ということは、僕と年齢も同じです。

 

しかし同じなのは年齢だけで、僕はTシャツにジーンズ、といったあか抜けないファッションしか知らない状態だったのに対し、彼女は、いかにも「大学デビューをした利発な女性」という印象で、それでいてよくありがちな「量産型女子大生」的な女性でもなく、まあ「哲学美人」とでもいえそうな、個性的なファッションを身にまとっていました。

 

僕とYさんは、所属のゼミナールは違いましたが、語学や専門科目などで度々同じクラスになり、最初はそういう外見的なところから注意が向いていたのが、しだいに彼女自身が醸し出す「大人の女性」ともいいえるオーラに、気づけばしっかりととりこになっていました。

 

「なんとか彼女に近づきたい」。そう思った僕は、あるとき、僕と彼女の共通の友人を介して、彼女さんの電話番号をゲットすることに成功しました。

 

夏休みに入る前くらいだったでしょうか。

我慢ができなかったのです・・・

 

ある日の夜、僕は意を決して、彼女に電話をしました。

「もしもし、あの同じ哲学科の○○ですけど、」
「あ、どうも!」

僕からの突然の電話にも関わらず、彼女の対応はさわやかでした。

 

「あの、講義で何回か話しかけてしまってすみません、迷惑だったかもしれないんだけど・・・」
「いえ、全然」

 

「なんて優しいんだろう」。そう思った次の瞬間、僕の中で「スイッチ」が入りました。

 

「君のこと好きだから!」
「え?うふふ。えー・・・」

 

突然の「告白」に、さすがに彼女も反応に困っている様子でした。
しかし「まんざらでもない」という感触に一瞬聞こえたものの・・・

 

「私も好きな人いるし。ごめんなさい」

 

まー、そうなるか・・・

 

落胆した僕でしたが、最初から玉砕覚悟の告白だったので、気を取り直して、、
「わかりました。あの、これまでどおり、同じ学科の仲間みたいな感じで・・・お願いします!」
「うん!」

 

次の日、彼女とは「なにもなかったかのように」挨拶をしました。

それから。

僕は意を決して遂行した自らの行為に、ある種の意味を見出したくなりました。

「ふん、こんないい男をふるなんて、俺のほうがいい男だってことを、思い知らせてやる!」

今思うとつまらない意地とプライドですが、若気の至りだったのでしょう。
「自分がいい男になって、今度は向こうから告白させてやる!」

そう決意した僕は周囲から似合わないと言われていた長髪をやめ、アルバイトやサークル活動に精をだし、学業のほうでも所属ゼミナールの発表や語学で優秀な成績をおさめました。

そんな僕の奮闘ぶりを見聞きしたのか、ある時から彼女の様子が、変わってきました。

僕が彼女に告白した当初は彼女も髪が長く、大人びたファッションをしていましたが、
あるとき、髪をセミロングにし、ミニスカートにするなど、外見的な変化を加えてきたのです。
「これは・・・違う男でもできたのかな?」

そう思っていたの矢先、電話番号を教えてくれた共通の知人が、「Yさんだけど、今の彼とうまくいかなくて悩んでるみたいよ。あなた(僕)にも、すこし気があるっぽいんだけど・・・」と教えてくれました。
そういうことか。

彼女は、自分から男を選べないんだ。

男のほうから選んでもらうのを待っているんだ。

じゃあもう1回僕から告白してもらって、強引に奪ってほしいのか?

そんなことを考えているうちに、急激に彼女への情熱は薄れてきました。

そして、「そんな『しめくくりが悪い女』に翻弄されている場合じゃない」という想いから、僕は彼女への気持ちを、自らかなぐり捨てることにしたのです。

まるでそれは、自らの著述活動に専念するために、一旦成立していた婚約を破棄したキルケゴールのようでした。

今思えば、僕のほうが子供だったのでしょう。

Yさんは、まあよくいるタイプの女性。でも精神年齢は女性のほうが上だったりするので、恋の主導権を握るのも上手だったのでしょうね。
あのままYさんの手のひらに転がされてみたら、どうなっていただろうか?
どんな景色が見えたんだろうか?

今でもそんなことを考える、ちょっと切ない恋でした。

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